V-V ECMOの管理方法について【血液流量の設定】

VVECMO血液流量アイキャッチ

ここではV-V ECMO中の血液流量の設定方法についてまとめています。

V-V ECMO中の血液流量は安定した高流量が基本ですが、患者さんの状態によって調整も必要です。

そして実はV-V ECMO中の血液流量は使用するカニューレの種類によっても(許容範囲が)変化します。

そんなカニューレの違いによる変化についても解説していきます。

この記事でこんなことがわかる!
  • V-V ECMO中の目標血液流量
  • V-V ECMO中の血液流量の設定方法
  • Avalonダブルルーメン使用時の血液流量について
Ecmorusun
Ecmorusun

V-V ECMOの目的や適応などの基本情報や、

『ECMOとは?』などの基本情報について知りたい方はこちらの記事をどうぞ!

V-V ECMO中の血液流量

目標の血液流量は?

V-V ECMO中の血液流量についてELSOガイドライン1)では次のように記述されています。

少なくとも正常な代謝を営む患者で、酸素供給とCO2除去を行える血流量であること。

  • 成人で60〜80ml/kg/min
  • 動脈血酸素飽和度>80%
  • 40%を超えるヘマトクリット値を維持すると最小の血流量で適正な酸素運搬を行える。

加えて、

最大値から目標とする酸素飽和度が得られるとことまで低下させる。
生理学的指標(平均血圧、動脈血と静脈血の酸素飽和度)の目標値を設定し、これが得られるように流量を調整する。

と記述されています。

つまり、60kgの成人患者なら
3.6L/min〜4.8L/minの血流量を最大値として、動脈血酸素飽和度>80%、Hct値>40%が達成できれば、

SaO2>80%、Hct>40%を維持しながら可能な限り流量を低下させ管理する。

ということです。

補足

V-V ECMOの導入時には、まずは患者さんの体重から目標流量を算出し、目標流量を問題なく設定できるカニューレ選びも重要になります。

Ecmorusun
Ecmorusun

カニューレの選び方については別記事にまとめてありますので、ぜひこちらからご覧ください!

そしてSaO2>80%、Hct>40%を維持するためには60〜80ml/kg/min以上の血液流量が必要になる場合もあります。

そこで次に血液流量の設定方法について解説していきます。

血液流量の調整方法は?

結論から言うと、

血液流量は酸素供給量と需要量を計算し、代謝に影響のない数値まで上げる必要があります。

まずはガイドラインに沿って60〜80ml/kg/minまで回し、そこから酸素消費量と供給量の計算によって至適流量を決定します。

酸素消費量と酸素供給量の関係として、次のものが有名です。

Aは正常時の酸素供給量

Bは供給量の増加

Cは嫌気性代謝(組織の低酸素)が起こる閾値

Dになると十分な酸素供給量が得られず酸素消費量が低下します。つまり代謝の低下が起こってしまいます。

よって、ECMO中も目標はCとBの間のAの部分になります。

ではどのような計算が必要なのでしょうか?

次にECMO中の酸素供給量と消費量についての計算方法を解説します。

ECMOの酸素供給量を計算する

Ecmorusun
Ecmorusun

ECMOの酸素供給量は以下のように求めることができます。

人工肺に酸素を流すとSaO2は100%近くになり、計算式においても100%=1.0になるだけなのでここではSaO2は無視します。

さらに、PaO2の部分も人工肺部で500mmHg近くに上がりますが、0.003を掛け算しなければならないため、酸素供給量にはほぼ影響しない値になります。

Ecmorusun
Ecmorusun

PaO2を500mmHgにあげても500×0.003=1.5しか供給量が上がりません。

簡単にすると、

【ECMO Flow】 × 【Hb値 × 13.6】で大体の供給量が計算できます。

酸素需要量の計算をする

組織における酸素の需要量は『酸素消費量』として求められます。

酸素消費量(VO2)は通常、成人で約200ml/minとされています。

酸素供給量(DO2)は通常、成人でCO = 5 L/min、Hb = 15 g/dl、SaO2 = 100%、PaO2 = 120mmHgとすると、

DO2 = 5 × 1.0 × 1.36 × 15 × 10 + 0.003 × 120

酸素供給量(DO2) ≒ 1000 ml/minとなり、

健常な成人では酸素消費量に対して、5倍程度の酸素供給量があり、かなり余裕があることがわかります

補足

酸素消費量はさまざまな影響(発熱や努力呼吸など)によって変動する上、臨床で真の値を計測するには患者さんの混合静脈血酸素含量を計測する必要があり、正確な値の計算は困難です。

Ecmorusun
Ecmorusun

代謝モニターなどで計測をして参考値にする場合もあります。

ECMO中は代替的に脱血側の静脈血酸素飽和度を使用したりしますが、リサーキュレーションの影響に大きく左右されます。

Aが正常時の酸素供給量、

Bは供給量の増加、

Cは嫌気性代謝(組織の低酸素)が起こる閾値

Dになると十分な酸素供給量が得られず酸素消費量が低下します。つまり代謝の低下が起こってしまいます。

ECMO中は上の表から、酸素消費量に対して供給量が3倍以上あれば十分とされています。

Ecmorusun
Ecmorusun

脱血側のサチュレーションが経時的に低下→酸素消費が上がった?→患者さんの変化を精査する→嫌気性代謝所見があればECMO Flowを上げる検討をする。といった具合で調節する必要があります。

結局どうやって血液流量を調整するの?

ここまでの情報をまとめてみると、

  • 60〜80ml/kg/minまで回す
  • (ECMO Flow) × (Hb値 × 13.6)で大体の酸素供給量を求める
  • とりあえず酸素消費量を200ml/minとする
  • 酸素供給量が酸素消費量の3倍以上あり、患者さんAライン血液ガスSaO2>80%で、Lac値などの嫌気性代謝パラメーターの上昇がないことを確認する
  • 達成できなければ血液流量を上げるか、輸血を行う
  • 血液流量を上げられなければ、カニューレを変更する

となります。

SaO2はSpO2の値と同等です。

V-V ECMO中はFlowを躊躇なく上げられますが、V−A ECMO中ですと少し話が変わります。

V-A ECMOやV-V ECMOの生理学については今後別記事でまとめていきたいと思います!

Avalon ダブルルーメンでは血流量が得られない?

Avalonカニューレの特殊性

V-V ECMOでは内頸静脈アプローチ1本で脱血・送血が済むAvalon Eliteという製品があります。

サイズ展開としては成人用だと20Fr、23Fr、27Fr、31Frがありますが、成人症例ではほぼ27Frが選択されます。

20Frのカニューレは私が説明を受けたときには販売中止になるとのことでしたので、普通の成人症例での選択肢としては27Frか31Frになりますが、31Frのカニューレはカットダウンして挿入する必要があるとのことでした。(メーカー談)また、23FrはCO2除去のみでの使用なら選択肢に入るかと思われます。

よって、V-V ECMOの成人症例ではほぼ27Frカニューレが使用されます。

Flow rate表からも27Frカニューレでは、4L/minの血流量を安定して取ろうとするとかなりの陰圧、陽圧(圧損)が発生するため、患者さんの血管内Volumeをかなり多くしておかないと流量が安定しません。

補足情報

フランスでのAvalon使用経験の文献では、最大流量について
23Frで3,207±653ml/min、27Frで3,963±729ml/min、31Frで5,490±984ml/minであったと報告しています。

(患者体重の平均は80.3±28.2)

よって、前項で記事にした目標血液流量はほぼ達成できませんが、

Avalonはリサーキュレーション率がかなり低いため、酸素供給能>酸素需要量が達成でき、問題なくV-V ECMOを行うことができます。

よって、このAvalonカニューレを使用する場合は目標血液流量を体重から決定するのではなく、ヘマトクリット値や、Lac値などの酸素供給量、需要量を考慮しながら設定を行う必要があります。

もし酸素供給が間に合わない場合には、躊躇なくカニューレの変更を検討しましょう。

Ecmorusun
Ecmorusun

Avalon使用時は脱血不良になりやすいため注意しましょう。

まとめ

ここではV-V ECMO中の目標血液流量、設定方法、Avalonダブルルーメン使用時の血液流量についてまとめました。

血液流量の設定と密接に関連する吹送ガスの設定方法などについても別記事でまとめていく予定です!

完成次第追記していきます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA