ここではECMO装置について、各社ごとに詳しく解説していきます!
- メーカー別のECMO装置の種類
- 各社ごとのECMO装置の特徴
- これからのECMO装置について
ECMOの基本情報はこちらの記事をどうぞ!
目次
ECMO装置は現在5社から販売中!
2021年現在、ECMO装置は国内では5社から販売されており、プラス1社が治験中となっています。
ECMOのシステム自体は単純ですが、会社ごとに特徴が大きく異なり、こだわりのある施設では装置を症例ごとに使い分けたりします。
日本では人工肺と遠心ポンプ、ECMO回路がはじめから一体型になっているプレコネクト回路が主流で、それぞれの回路とセットでECMO装置も異なります。
そのため、装置を購入する際は回路やカニューレもセットで確認してからでないといけません。
体外循環用の遠心ポンプは現在8社が製造していますが、ECMO用のプレコネクト回路は5社に限られています。
現在は3社のECMO装置が主流です!
私の施設ではテルモと泉工医科のものを使用しているので、その使用感も交えながら1社ずつお伝えします!
※注意 このページで記載している私見についてはEcmorusun個人の見解であり、所属する組織の見解ではありません。
【TERUMO】 SP-200Neo
- 国内シェアNo.1(前機種SP-101 Plus含む)、
- 圧力測定範囲-250〜999mmHg、2chまで表示可能
- 圧力測定は専用キットを使用(陰圧測定不可)するか、JMSのカルディアプレスやPS-1を使用(陰圧測定可、観血式)
- 流量/気泡センサーを採用
- 温度測定2ch
- 冷温水槽、ガスブレンダーは別売
- 回路内酸素飽和度測定不可、オプションで別売のCDIを使用
- メーカーと相談しながら回路カスタマイズが可能
- バッテリー:リチウムイオン(1時間)
引用元:TERUMOホームページ
SP-200Neoの歴史
テルモのECMO装置は、前の機種であるSP-101 Plus とともに日本国内で多く使用されています。(日本と韓国以外はほぼなし)
というのも、PCPSシステムの開発の際にテルモが依頼を受け、研究を重ねて発売されたのが1995年※であり、そこからVA-ECMO(PCPS)が全国で広まり、ある程度のエビデンスが確立されてから各社がECMO装置を製造、販売し始めています。
医療機器の買い替えの周期はだいたい6〜10年程度ですので、買い替え時期にまだECMO装置は出揃ってなく、なかなか他社に乗り換えるといったことはされなかった背景があるようです。
※TERUMOの歴史より引用
国内での元祖ECMO装置といったところでしょうか
SP-200Neoの特徴
SP-200Neoになってから温度表示、圧測定が可能となり、併行して回路の耐久性(遠心ポンプの耐久性)が向上したりと、進化しつづけていますが、圧測定には陰圧測定ができない測定キットを使用するか、別会社であるJMSのカルディアプレスなどを購入し、回路を専用回路に変更する必要があります。
そもそも使用数の少ないECMO装置のオプションとしてはかなり高価なため、導入するにはハードルが高いです。
冷温水槽やガスブレンダーは別売りとなっているのと、架台も種類があり、自由に選択できます。
この装置の画像では下肢や頭部の局所ヘモグロビン酸素飽和度を測定するSenSmart酸素飽和度モニターや回路内の酸素飽和度を測定するCDIシステム、データマネジメントソフトのモニターがついており、これらはすべてオプション品なので、実際はもう少しシンプルな外観になっています。
シンプルな構造で汎用性があり、Ecmorusunの施設では主にVA-ECMOのとき使用しています。
SP-200Neoの私見
シンプルな画面構成でモニタリング可能な項目は少ないですが、最低限の機能は備えてありますので、特に不便はないと思われます。
しかし、現在のこの業界の全体的な流れとして回路内圧の測定が常設されている装置が増えてきており、別会社の製品に頼りざるを得ない状況は打破してほしいと個人的には思っています。
カルディアプレスの取り回しがイマイチです・・
遠心ポンプも改良され長期使用が可能になりましたし、回路のカスタマイズもメーカーさんがフレキシブルに対応してくれるのも良い点です。
そしてその専用の回路(エマセブ回路)とカニューレにはXコーティングという特殊なコーティングがされており、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の患者さんにも使用できます。『導入後にHITになったため、装置ごとTERUMOのものへ交換した』という症例も報告されています。
【泉工医科】 HCS-CFP UNIMO
- 国内シェアNo.2
- 圧力測定範囲-300〜750mmHg、4chまで表示可能
- 血液と接触せずに回路内圧を測定可能
- 流量/気泡センサーを採用 2ch
- 温度測定2ch
- 電子ブレンダ搭載:オートガスフラッシュ、V/Q機能あり
- 冷温水槽搭載
- 回路内酸素飽和度測定可能 2ch
- バッテリー:架台にLiイオン、本体にNi-MH(1時間+1時間)
引用元:泉工医科ホームページ
HCS-CFP UNIMOの歴史
泉工のECMO装置は2016年頃に発売された機種で、前機種であるメラ遠心血液ポンプ装置HPMシリーズを改良して開発されました。
古くから人工心肺のHAS-Ⅱなどで体外循環のノウハウもあった企業であることや、国内のECMOをさかんに行っている施設の意見を多く取り入れ、オールインワンシステムを目指した装置です。
後発品の強みですね!
HCS-CFP UNIMOの特徴
冷温水槽、ガスブレンダーが架台部分に内蔵されており、人工肺の並列使用や、V-AV ECMOなどのハイブリッドECMOにも対応できるように流量センサーが2ch表示可能です。上部のモニターの部分は取り外しできるため、搬送用としても活躍しています(冷温水槽などは切り離されます)。
ガスブレンダーは電子ブレンダーになっており、人工肺のwetlung防止のためのガスフラッシュを流量、フラッシュ時間、間隔が設定可能であり、ガス圧を監視しているため、ガスの流し忘れや接続外れもアラームで報知してくれます。
また、V/Qモードという『送血流量に合わせてその〜%吹送ガスを流す』という設定が可能で、脱血不良などで送血流量が低下したときにも吹送ガス流量が追従して低下してくれるので、PaCO2が低下しすぎてしまうなどのエラーを防止できます。
HCS-CFP UNIMOの私見
冷温水槽が内蔵されているので、装置自体は重たく感じます。施設によってはECMO導入後の搬送などが少し大変かもしれません。
泉工のECMO装置とセットで使用されるカニューレもここ最近改良され、VA-ECMOでの使用も特に問題なく使用できていますが、専用の回路(SOLAS回路)とカニューレにはヘパリンコーティングがされている※ため、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の患者さんには使用できません。『導入後にHITになったため、装置ごと交換した』という症例も報告されています。
この装置交換が提案できるのはMEならではだと思います!
※泉工医科の製品で、非ヘパリンコーティングのものもありますが、抗血栓性能は落ちます。
【GETINGE】 Cardiohelp
- 日本では高価なため限られた施設のみ使用、海外での採用が多い
- 圧力測定範囲-500〜900mmHg、3chまで表示可能
- 植込み型の血液非接触式センサーで回路内圧が測定可能、センサーの接続などが不要
- 温度測定2ch、脱血側酸素飽和度、Hct、Hbが測定可能
- 冷温水槽、ガスブレンダーは別売
- ECMO搬送やPreHospitalでのECPRの症例報告はほぼこの装置
- 専用回路によりECMO,VAD,MECC(人工心肺),PALPが選択可能
- バッテリー:リチウムイオン(90分)
引用元:GETINGEホームページ
Cardiohelpの歴史
ゲティンゲのECMO装置は、2010年にCEマークを取得し欧州で販売開始され、2013年にようやく日本の薬事承認を受け販売されました。
しかし当時ECMO回路の保険償還の承認が取れておらず※、装置も高価であることや、そもそもこの装置の売りであるECMO搬送は日本国内で行える施設が少ないため、限られた施設でしか導入されていないのが現状のようです。
※2019年に保険償還承認済みです
そこで2021年に少しだけ変化がありました。
現在すべてのECMO回路が6時間以内の使用(耐久性)を想定して薬事承認を得たものであり、オフラベル使用をせざるを得ない状況が続いていましたが、ゲティンゲECMO装置の専用回路であるHLS Set Advanced-LTは、国内での治験が進み、中長期使用を想定した14日間の使用保証を得て、薬事承認を受けたようです。
これからの動向が気になる装置ですね。
2023年追記
ついにHLS Setが保険適用されました!
最大14日間使用可能であり、新たに保険適用区分が設けられ、535,000円の償還価格がつけられました。
他社の回路価格を大幅に上回った設定で、本体価格をペイできる可能性があり、今後の国内シェア率が変化するかもしれません。
Cardiohelpの特徴
軽量、小型のECMO装置として主に『搬送』を意識して作られたCardiohelpですが、最近はフランスのSAMUという国の公的医療サービスグループが行っているPrehospital ECPRでの使用報告が有名です。
こちらで地下鉄のホームでのECMOが見れます。SAMUの活動
このコンパクトな設計にもかかわらず、圧センサーや温度センサー、SvO2やHct、Hbがリアルタイムで測定できるため、唯一性は群を抜いています。
冷温水槽やガスブレンダーは別売りとなっており、前会社であるMAQUET製のもの(EGB40など)を購入するか、各施設で選んで購入する必要があります。
この装置専用の回路はいくつか種類があり、治療方法に合わせて回路と装置内のアプリケーションが選択できます。V-A、V-V、VAD(人工肺なし)、MECC(人工心肺、リザーバーなどが付属)、PALP(人工肺のみ、動脈圧を利用したCO2除去)が選択可能です。MECC-i、PALP カタログPDF
ECMO用のもの以外の詳細はできる限り追記します・・・
また、この装置専用の回路に接続されている遠心ポンプはRotaflowと記載されていますが、Cardiohelp用のものは血液の流出路が4つもあり、圧力損失が抑えられているという特殊な造りになっています。
人工肺の造りも中空糸が網目状に編み込まれており、酸素化効率を向上させています。
Cardiohelpの私見
ECMOをする上で全く不足のない装置ではありますが、一度見積もりをとったところ予算が桁から合わずに諦めるくらい高価です。
また、海外ではGETINGEからRotaflow Ⅱという装置も出ているようです。
そしてCardiohelpの回路もヘパリンコーティングがされているため、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の患者さんには使用できません。
プライミングが少し複雑で、時間がかかるため海外ではプライミングをして1週間はそのままにしスタンバイしているようです。
個人的には一番ほしい装置です
【JMS】 ECmoVA
- 2018年発売、モバイルECMOがコンセプトであり、国内でPreHospital ECPRを積極的に行っている施設で使用されている
- 上部の重量は4.5kgであり、専用のキャリアバッグもあるため持ち運びが容易
- 圧力測定範囲-250〜999mmHg、上部+下部で5chまで表示可能
- カルディアプレスやPS-1を使用して回路内圧を測定
- 温度測定5chまで増設可能
- 冷温水槽、ガスブレンダーは別売
- 回路内酸素飽和度測定不可
- バッテリー:上部リチウムイオン(45分)、外部バッテリーに鉛蓄電池(60分)
引用元:JMSホームページ
ECmoVAの歴史
JMSのECMO装置はゲティンゲのECMO装置と似ており、国産の搬送用小型ECMOとして開発されました。
現在この装置を使用したという国内の文献はPrehospital ECMOを積極的に行っている施設からのみで、導入されている施設はあるものの、まだまだ情報が少ないです。
Cardiohelpより軽量、コンパクトな設計になっています。
しかも現在JMSから新たな小型ECMOシステム(?)を近畿大学と共同開発したとの情報もあり、続報が待たれます。
ECmoVAの特徴
上部がモジュールユニット、下部をベースユニットと呼び、脱着ができます。
施設間搬送や院内搬送の際はモジュールユニットのみで可搬性を優先したmobile ECMOとして使用でき、集中治療室などではベースユニットを装着し、圧力測定などのモニタリング項目を増やして管理ができます。
これまたCardiohelp同様、専用のキャリングケースなどもあり、搬送に特化したECMO装置となっています。
回路内圧を入力することで自動で揚程を計算し、表示させることができることも特徴のひとつです。
ECmoVAの私見
治験開始時の文献を読むと、「バッテリー残量の視認性の改良余地がある」との記載があり、どのような改良がされたのか不明なのと、カタログを見ても情報が少なく謎多き装置です。
より詳しい情報が入り次第追記していきたいと思います。
情報が少なくてすみません。。
【平和物産】 Endumo
- 2009年頃に国立循環器病研究センターが開発したECMOシステム
- GETINGE(当時MAQUET)社のRotaflow用のプレコネクト回路用システムと、Medtronic社のジャイロポンプ用プレコネクト回路システムがある
- 圧力測定、温度測定などは不可
- 冷温水槽、ガスブレンダーは別売
- 回路内酸素飽和度測定不可
- 回路は流すだけで2分程度でプライミング可能
- バッテリー:それぞれのシステムに依存
引用元:平和物産ホームページ
Endumoの歴史
国立循環器病研究センターが開発したECMOシステムであり、装置というより回路システムを平和物産が販売しています。
開発背景として、ECMO回路は血液ポンプを含め6時間を超えた使用は承認されていないにも関わらず、2日目以降の使用時に診療報酬が存在する矛盾があり、そこを解消するべく長期使用が可能な人工肺、血液ポンプの開発研究が行われました。
動物実験ですが、ヘパリンなしで3ヶ月以上の連続使用を達成しています。
Endumoの特徴
比較的古いシステムなのでRotaflow用のロータフローコンソールは圧モニタリングなどができません。ジャイロポンプ用のバイオコンソールは圧測定が可能です。
このEndumoというECMO装置の概要は『耐久性の高いニプロ社のBiocubeという人工肺と、バイオフロートという遠心ポンプ、特殊なコーティング(TNC(T-NCVC®)ヘパリンコーティング:超高濃度ヘパリン)がされた回路をプレコネクト回路として販売するための装置セット』と言えるでしょう。
このECMOシステムは平和物産から購入する必要があり、なんだか複雑ですが、国循がコーティングや人工肺を開発していった上で、当時にしては完璧なECMO装置を作った結果このような形態になったようです。
迅速なセットアップと長期使用を目的としたECMOシステムです
Endumoの私見
小児用のECMOシステムとしても長期の連続使用が可能であったとされる報告(参考文献)などがあり、ECMOの黎明期に限られた施設で導入されたシステムのようです。
そして現在この国循がニプロ株式会社、株式会社レグザムと共同開発し、治験を進めているのが『世界最小のECMOシステム』と称しているECMOシステムです。
おまけ 治験中のECMO装置(名称なし)
- 2020に国立循環器病研究センターが治験開始したECMOシステム
- 200Lの酸素ボンベを含めて8.9kgと超軽量
- 圧力測定4ch、温度測定3ch、酸素飽和度測定も2ch可能
- 冷温水槽はなし
- セットとなるECMO回路の耐久性はお墨付き
- タッチパネル式でデータ出力なども可能
- バッテリー:60分
引用元:ニプロ株式会社 平成29年度医工連携事業化推進事業 成果報告書より こちらから
概要
2020年の3月から治験を開始し、2年程度行う予定のようです。世界最小のECMOシステムで可搬性もありながら耐久性にも優れ、モニタリング項目も充実しているため、すべてのシーンで活躍できるECMOシステムが開発されました。
値段や治験結果次第ではこのECMO装置1台で解決してしまいそうな、夢のような装置だと思います!
数年前からこのECMO装置の概要を各所で話されていて、ついに完成したようです。温度調節はどうするのか、画面の視認性なども気になるところですので、続報を待ちましょう!
まとめ
いかがだったでしょうか?
ここでは現在ECMO装置についてわかっていることをまとめてみました!
今後なにか進展があれば追記し告知していきたいと思います!!