V-A ECMOの予後予測因子・スコアについてまとめました【ECPR,PCPS】

ECPR予後予測アイキャッチ

ここではECPR(V-A ECMO、PCPS)の予後予測スコアや、予後予測因子についての情報をまとめています。

ECPRの適応基準は「可逆的であること」など、少し曖昧なものになっています。

V-A ECMOの適応アイキャッチ V-A ECMOの適応基準をまとめました!【ECPR,PCPSの適応】

ECPRの予後予測因子(初期波形やさまざまなECMO前検査値)から施設内での導入基準を決めることもあり、予後予測因子は重要なものかと思われます。

ここでまとめている文献はあくまで予後予測に関するもので、ガイドラインなどで推奨されているものではありません。

この記事でこんなことがわかる!
  • V-A ECMOの予後予測因子について
  • 予後予測スコアについて
  • ECPR導入の判断材料

V-A ECMO、PCPS、ECPRの用語の違いや、ECMOの基本情報などはこちらからご覧ください!

ECPRの予後不良因子

ECPRを行う前の患者情報・状況のうち、救命率や神経学的予後を不良にする因子を指します。

この予後不良因子を加味してECPRを導入するか否かを判断する必要があります。

ECPRの予後不良因子とされているもの

Ecmorusun
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院外心停止患者の予後不良因子を文献からまとめてみました。

ECPRの予後不良因子まとめ※
  • 初期波形が電気ショックの非適応波形(Asystole、PEA)
  • 目撃者(witness)なし
  • バイスタンダー(bystander)なし
  • 病着時のrSO2(局所脳酸素飽和度)が42%以下
  • ROSC後の血中乳酸値(Lac値)が7mmol/L 以上
  • ROSC後の血漿アンモニア値が64μmol/L 以上
  • 年齢が85歳以上

※院外心停止後30日目に死亡、または神経学的予後不良をもたらす心停止後症候群(PCAS:post cardiac arrest syndrome)の発生率が高いものをまとめています。

PCAS(心停止後症候群)とは? -Post Cardiac Arrest Syndrome-
  • 心停止後に自己心拍が再開した際の虚血再灌流によって起こる病態の総称として提唱。
  • ROSC後の脳障害、心筋障害、全身性虚血再灌流障害、心停止を発症した病態の継続、の4つの病態で構成される。

また、一部参考文献がないことや、2021年時点でのガイドライン改定があったため一部改変してまとめてあります。

ひとつずつ解説します。

初期波形がAsystole、PEA

こちらではPCASの発生率がショック適応波形で約36〜47%に対し、ショック適応外の心静止(Asystole)、無脈性電気活動(PEA)波形では約86〜89%と報告されています。

Ecmorusun
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いわゆる初期波形というものが重要とされています。

目撃者なし、バイスタンダーなし

院外心停止時に目撃者なし、バイスタンダーなしとなると、心停止からの時間経過によってAsystoleやPEAへ移行してしまうため、やはり予後不良になり得ます。

しかし、目撃者なしの場合でも病院到着時に心室細動である場合は予後良好であると報告されています。

病院到着時のrSO2が42%以下

Ecmorusun
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INVOSやNIROでの測定結果も予後予測に使用されます。

rSO2は、NIRS(near infrared spectroscopy(近赤外線分光法))を用いて測定される脳や骨格筋など組織酸素飽和度のことです。

院外心停止患者のうち、神経学的予後が良好であった患者は、病院到着時のrSO2が有意に高かった(平均55.6 ± 20.8% vs 19.7 ± 11.0% p<0.001)。

また、神経学的転帰の良好な状態を予測するための最適なrSO2カットオフ値は42%以上であったと報告しています。

院外心停止でrSO2を装着し10〜20%の値であっただけでECPRを適応外にするのは、測定エラーの可能性や現時点でエビデンス不足なので避けてください。

Ecmorusun
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あくまで予後予測としての参考としましょう。

病院到着時の血中Lac値と血漿アンモニア値

院外心停止患者のうち、ROSCがあった患者の血中アンモニア濃度が64μmol/L以上、

血中乳酸値(Lac値)が6.8mmol/L以上(ROC曲線カットオフ値)の場合に予後不良であったと報告しています。

(アンモニア値のAUCは0.790(95%CI:0.744-0.836、P<0.001)、Lac値のAUCは0.767(95%CI:0.714-0.820、P<0.001))

これもエビデンスとしては弱いため、あくまで参考程度に留めておくことをおすすめします。

ECPRの予後予測スコア

次に、ECPRの予後を簡易的に予想できるスコアの論文がいくつか報告されているため、紹介いたします。

SAVEスコア

ECMOに関する国際的組織であるELSOに登録された症例から、データを解析し作成されました。

オーストラリア・メルボルンのアルフレッド病院によって外部検証がなされ、心原性心停止へのV-A ECMOの予後予測スコアとして妥当性があると報告されています。

SAVEスコア

SAVEスコアは無料で公開されています。

リンク→SAVE score

項目としては心原性であるか、初期波形がVf,VTか、年齢や体重、ECMO導入後の状態などを入力し、点数が低いほど救命率が低下するとされています。

Ecmorusun
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ここで入力する項目が予後に関連するものであるため、これら項目も合わせてご確認ください。

TiPS65スコア

初期波形Vf、VTのときにECPRを実施した院外心停止患者の神経学的予後を予測するためのスコアが報告されています。

Time: 覚知から病院搬入まで25分以内 +1点
pH :病院搬入時の血液ガスのpH>7.0  +1点
S :Shock適応(病院到着時)  +1点
65 :65歳未満  +1点

以上の頭文字をとってTiPS65と名付けられたようです。

合計点で3,4点以上では30日後の神経学的予後良好とされるのは30%前後、
0点では30日後の神経学的予後良好とされるのは1%程度となるようです。

3〜4点となる症例は積極的にECPRを導入、0点では議論が必要、と判断基準として使用できそうです。

作成者は、『あくまで簡易的に、かつ迅速に導入の判断を支援するためのもの』として使用してほしいと提言しています。

まとめ

ECPRの予後予測因子、予後予測スコアについてまとめてみました。

ECPRは時間との勝負なので、いち早い導入判断の一助になればと思います。

Ecmorusun
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この記事を参考に、施設内でもECPRの導入プロトコルを作成し、救命率の向上を目指していただきたいと思います。

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