ここではこのブログの肝となる、ECMOについての基本情報を解説していきます!
ECMOはここ最近、新型コロナウィルスの重症例への対処法としてニュースで取り上げられ、知名度を一気に上げました。
私はECMOについての情報収集や、管理をしていく課程が好きで、このブログを始めてしまったくらいなのですが、ECMOが新型コロナウィルスへの特効薬として語られていくことに少し不安を覚えています。
ECMOにはいいところも悪いところもある!
私はこのブログで、ECMOに関する正しい情報や、当院での実際の管理について発信していけたらと思っています。
そこでまずはECMOに関する超基本情報からです!
目次
ECMOを学ぶその前に・・・
心臓や肺の役割
まずは重要な肺と心臓の役割について知りましょう!
人の肺は空気を吸うことで、その空気の中に含まれる酸素を血液中に取り込むと同時に、血液中の二酸化炭素を体外に排出するガス交換、つまり呼吸を行っています。
そして心臓は、全身の組織へ酸素を受け渡したあとの血液である『静脈血』を肺に送り、肺でガス交換をして酸素を受け取った『動脈血』をまた全身へ送るという役割があります。
体の中の血管は静脈と動脈に分かれており、動脈によって酸素化した血液を全身に供給し、酸素を消費した血液は静脈を通ってまた心臓へ返っていきます。
こうして常に体の中で血液が循環することで、我々人間は生きていられるのです。
すべてが血管でつながっています!
ECMOがなぜ必要になるのか
心臓の機能が低下すれば酸素を届けることができませんし、
肺の機能が低下すれば酸素を取り込めなくなります。
なんらかの原因で心臓や肺の機能が低下した際に、薬物療法や酸素療法、人工呼吸器での管理などで救命ができますが、
それでも循環が保てなかったり、人工呼吸器を使っても呼吸機能がどんどん悪化することがあります。
つまり従来の治療(薬やその他の治療法)でも対応できず、生命維持が困難な場合、ECMOが検討されます。
年齢や、可逆的でない場合など、さまざまな適応基準があるのであくまで検討です。
ECMOにはV-A ECMOとV-V ECMOがあり、それぞれ適応が異なります。
それぞれの適応についてはこちらでまとめてあります!
ECMOとは?
ECMOはExtraCorporeal Membrane Oxygenationの略語で、『体外式膜型人工肺』と訳されます。
肺の代行装置という意味ではありますが、他にも役割があります。
ECMOの役割
- 肺や心臓の機能が極端に低下してしまった人に対して、血液ポンプ(遠心ポンプ)による血液循環の補助と、人工肺によって肺の役割であるガス交換を代行する
- 血液循環と肺の代行をすることで結果的に脳機能を保護する
- 人工肺についている熱交換器によって体温管理療法(TTM)が行える
心臓や肺が極端に悪化してしまった際の最後の切り札的存在!
呼吸と血液循環に対する究極の対処療法とされており、心臓や肺が回復するまでの間、これらの役割を代行します。
つまりECMOは過度に負荷がかかった心臓や肺を休ませるために使用されます。
残念ながら、肺や心臓を治す機械ではないのです・・・
生命を維持することを目的とすることから、ECMOや人工呼吸器は生命維持管理装置と呼ばれ、臨床工学技士はこのECMOの管理を任されており、遠心ポンプの流量調整や、人工肺のガス交換量調整などを患者さんの状態を把握しながら行っています。
ECMOの構成
ここまで何度か書いてきましたが、ECMOは遠心ポンプと人工肺が一体型となった閉鎖回路と、遠心ポンプコントローラー(ECMO装置)、ガスブレンダーで構成されています。
また、この回路を患者さんと接続するためのカニューレも必要です。
経皮的に血管へ挿入し、血液を脱血、送血することができるようになります。
カニューレは患者さんの体格に合わせてサイズや種類を変更したり、カニューレの種類によって回路を切断する必要があります。
いざというときのために、
臨床工学技士の準備が重要になります!
患者さんの血管に挿したカニューレをECMO回路に接続し、遠心ポンプを回して体の外で血液を酸素化して戻してあげる。これが『体外式』と名付けられた理由になります。
ECMO装置、カニューレについては別記事でまとめていますので、ぜひご覧ください!
ECMOには種類がたくさんある!
日本では単にECMOというとRespiratory ECMO(呼吸を代行するECMO)を指すことが多いのですが、心臓の補助をしたいのか、呼吸の代行をしたいかによって血液を送る場所が異なり、細かく分類されています。
Vはvein(静脈)、AはArtery(動脈)を指します。
新型コロナウィルスで選択されるのはV-V ECMOになります。
V-A ECMOは心臓の補助、つまり循環補助を、V-V ECMOは肺の代行を目的としており、それぞれ適応やモニタリング方法、カニューレの種類の違いなど、一文字変えるだけで全く異なる性質を持っていて、ECMOというものをより複雑にしています。
ECMOとはなにか?と考えてみると、やはりまとめて話すことは混乱を招くと思われます。
ECMOについて話してください!などの依頼は逆にとてもむずかしいのです・・・
さらにV-A ECMOは「PCPS」や「ECPR」、「Cardiac ECMO」と呼ばれていたり、
V-V ECMOは「Respiratory ECMO」と呼ばれたり、同じ方法なのに違う呼び名が多数存在してしまっています。
文献などを探すときとても大変です・・・
PCPS(Percutaneous caidiopulmonary support)は経皮的心肺補助装置と装置名を指していて、ECPRは体外式心肺補助法、Cardiac ECMOは心臓へのECMOと、それぞれ呼ぶ対象が異なるためこうして分岐していきました。
なかでも『PCPS』は1991年のPCPS研究会発足を皮切りに日本国内で普及したようで、この呼び名は最近まで日本や韓国でしか使われていませんでした。現在、日本から世界へ良質なECMOの情報発信ができるほど日本の成績が向上してきたため、ようやくV-A ECMO、V-V ECMOと呼び名が統一され始めてきています。PCPS研究会が名称やロゴを変更したのも大きな変化かと思われます。
ちなみに海外の文献を探す際には『ECLS』、『CPS』、『percutaneous cardiopulmonary bypass』、『emergent portable bypass system』などと検索するとECMO関連のものが漁れます。
ECMOはデバイスや種類が多いですし、V-A ECMOとV-V ECMOは全くと言っていいほど別物だったりするので、今後より詳しく記事を書いていければと思います!
まとめ
今回はECMOの基本情報について書かせていただきました!
ECMOに携わる医療従事者の方々には少し物足りないものだったかと思われます。
私はECMOを管理する上で重要なことは、ECMOを回すことだけではなく、患者の状態に合わせ人工呼吸器の設定や、薬剤、リハビリ、モニタリング方法など、多職種による集学的治療によって成り立つと思っています。それぞれの職種から多角的なアプローチをして、この方法は成り立っているなとつくづく感じます。
ECMOの管理をしていく上で少しでも多くの情報を知っておけば、チーム医療の一角を担い、患者さんへ高度な医療を提供できるはずです。
ECMOはまだまだ奥が深い!
今後もECMOについて、またそれに関係する管理について書いていくのでよろしくおねがいします!