V-V ECMOの目的や適応について【基礎】

V-V ECMO基本

ここではV-V ECMOの基本情報についてを解説していきます。

V-V ECMOってなに?

V-V ECMOってどんな人に使うの?

適応基準は?

といった疑問について、徹底的に解説していきます。

この記事でこんなことがわかる!
  • V-V ECMOの基礎
  • V-V ECMOの目的
  • V-V ECMOの特徴
  • V-V ECMOの適応
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ECMOの基本情報などについてはこちらをご覧ください!

V-V ECMOとは?

名称について

V-V ECMOはVeno-Venous Extra Corporeal Membrane Oxigenationの略で、

静脈-静脈 体外式膜型人工肺と訳します。

最近ではRespiratory ECMOとも呼ばれています。

一昔前はECMOといえばこちらのV-V ECMOを指していましたが、現在はV-Vをつけた呼び方で統一されてきています。

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新型コロナウィルスで話題になったものです!

どんな人に使う?

V-V ECMOは一言で言えば、『超重症呼吸不全に対する人工肺による酸素化補助』です。

通常呼吸不全に陥ってしまったときは、酸素療法や人工呼吸器によって呼吸や肺の機能を補助しますが、まれに人工呼吸器によるサポートでもまかないきれないような低酸素状態に進行する病態が存在します。

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FIO2 1.0でPEEPもかかって換気量も入ってるのにSpO2 70%台など・・・

そんな状態になってしまった肺が治癒されるまでの間、肺を休めてあげる目的でV-V ECMOが使用されます。

新型コロナウィルス(COVID-19)による重症呼吸不全に対してV-V ECMOが多く使用され、もはや一般の方へも周知されています。

どうやってやる?

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簡単な図を書いてみました

静脈血を遠心ポンプで脱血し、人工肺で酸素化してふたたび静脈に戻します。

酸素化された血液は自分の心臓の力によって全身へ送られます。

血液を体外で直接酸素化するので、呼吸による酸素・二酸化炭素のガス交換が不要になります。

※送血・脱血の位置は施設によって異なります。

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呼吸をしなくてよくなるので、『肺に仕事をさせない』ことができます。

ECMOのために血液を体外へ出すにはカニューレが必要になります。

そのカニューレにECMO回路を接続することでECMOを行うことでできます。

ECMOのカニューレについてはこちらからご覧ください!

ECMOカニューレアイキャッチ ECMOカニューレの選び方を徹底解説!メーカー別にまとめました

V-V ECMOの目的

VILIを防ぎたい!

重症呼吸不全になってしまった肺に対して、人工呼吸器でなんとか生命維持しようとすると、さまざまな障害が起こってしまいます。

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ボロボロの風船を一生懸命膨らますことを想像してください・・・

これを人工呼吸誘発性肺障害VILI(Ventilator-Induced Lung Injury)、または人工呼吸器関連肺障害:VALI(Ventilator-Associated Lung Injury)と呼び、人を助けるための人工呼吸器が、むしろ肺障害を進行させる原因になってしまうことがわかっています。

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『人工呼吸器は肺を良くすることはできないが、悪くすることはできる』と、ある先生はおっしゃってました。

通常VILIを防ぐためには『肺保護換気』による人工呼吸器管理が必要になりますが、V-V ECMOが必要になる患者さんに肺保護換気をしていては酸素化が間に合いません。

V-V ECMOの目的は、肺をむりやり換気しなくてよくすること=休めることです。

V-V ECMOを導入し、肺を使わないようにしてあげるこのような状態をLung Rest(肺を休める)と呼び、肺を休めてあげるような人工呼吸器管理・設定ができるようになります。

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最小限の人工呼吸器設定でVILIを予防できます!

P-SILIも防ぎたい!

また最近では、重症呼吸不全の人工呼吸管理において、過剰な自発呼吸による経肺圧の上昇が自己肺傷害などを引き起こすP-SILI(patient self–inflicted lung injury)という概念が提唱され、このP-SILIを防止するためにもV-V ECMOは導入されます。

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新型コロナでの重症化への速さはP-SILIが大きく関連しています。

V-V ECMOの特徴

V-V ECMOは長期化しやすい

V-V ECMOは肺を治すような方法ではなく、肺が治るまでの間肺機能を代行し、待つ方法なので、非常に長期化しやすいという特徴があります。

新型コロナウィルスへのECMO管理は平均して2週間〜1ヶ月間という期間使用されていることがわかっています。

また、国内で最長の管理日数は189日間だったそうです。

ECMOを導入する時点ではどれだけの期間使用することになるのかは不明です。

よって耐久性のある遠心ポンプ(長期使用型遠心ポンプ)を使用する必要があったり、安定して脱血できるカニューレ選びが重要になります。

V-V ECMO+リハビリテーションの特殊性

V-V ECMO中、肺が治るまで寝たきりだと筋力が低下してしまい、さまざまな障害が起こり得ます。

そこでECMOを使用しながらAwake(覚醒下)で歩行訓練などのリハビリテーションを行うことがあります。

TwitterではECMOを使用しながら歩行訓練をする光景が動画で見ることができます。

V-V ECMOは安定すれば肺の機能以外の日常生活に必要な部分はそのまま保つことができるので、より早く社会復帰することができます。

私の施設でもV-V ECMOを使用しながらの腹臥位療法や、歩行訓練を行ったりと、積極的にリハビリテーションを行っています。

患者さんとのコミュニケーション、多職種による密な情報交換が必須であり、その難しさはECMO治療のハードルとなっています。

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究極のチーム医療だとおもっています!

患者さん目線のECMO管理について

国内ではECMO管理から無事に救命された患者さんが、日本呼吸療法医学会学術集会にて患者代表として発表されました。

当時、非常に衝撃的な光景であり、患者さんからECMO治療に対する恐怖や、医療従事者への感謝についてを語っています。

そしてなんとその模様がYouTubeで観ることができますので、ぜひ観ていただきたいと思います。

V-V ECMOの適応

V-V ECMOは通常の人工呼吸器管理では酸素化が維持できない場合や、高二酸化炭素血症になる場合に使用されます。

V-V ECMO導入の基準として一般的なのがELSO(Extracorporeal Life Support Organization:ECMOの国際的組織)のガイドラインで、他にはGiles J PeekらによるRCTであるCESAR trial(※1)や、Combes AらによるEOLIA trial(※2)の適応基準を考慮しながら導入の判断を行っています。

V-V ECMOの適応・除外基準

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それぞれの適応・除外基準をまとめてみました。(表)

ECMO適応
V-V ECMOの適応・禁忌基準一覧

V-V ECMOの絶対的な禁忌となる項目はなく、相対的禁忌にあてはまる状態であっても導入せざるを得ない状況があります。

※2022年追記

ELSOガイドラインが更新されていました。(ELSOガイドライン 2021 リンク

V-V ECMOは症例の集約化が推奨されている

可逆性のある肺病変かどうかの判断は非常に難しく、MurrayスコアやP/F比などを組み合わせることで患者さんの状態を慎重かつ総合的に判断する必要があり、経験が豊富ではない施設での導入は専門家の意見を取り入れる必要があるとされています。

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慣れていない施設での導入は避け、症例を集約化するよう提言されています。

というのも、2009年の新型インフルエンザパンデミック後から、重症呼吸不全患者に対するECMOに有効性があることがCESAR trialやEOLIA trialによって示されましたが、ECMO管理に習熟している施設での治療は死亡率の低さと相関しているという報告があります。

適切なECMO適応の判断ができるかどうかも予後と関連するとされており、

日本では『日本COVID–19対策ECMOnet』 にある相談窓口が設けられています。

もちろん新型コロナウィルスの感染拡大に伴うV-V ECMOの需要増加の前から、V-V ECMOの管理、方法などを伝達すべく、慣れていない施設を対象に講習会などを行っており、国内でのV-V ECMOによる治療法の標準化を図っています。

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この活動のおかげで日本の新型コロナ重症患者の治療成績は、世界トップクラスを維持しています!

ELSOガイドライン

ELSOのガイドラインでの適応判断項目は以下のとおりです。

  • 人工呼吸で反応しない低酸素性呼吸不全
  • 重症呼吸性アシドーシスを呈した高二酸化炭素血症
  • その他:重症air Leak症候群、肺移植待ち、窒息

このうち、低酸素血症の基準としてP/F比とMurrayスコア(表)の組み合わせから死亡リスクを見積もり、ECMOの適応があるかを判断します。

Murrayスコア表
表 Murrayスコア :点数が高くなるほど重症になる

P/F比が150以下(FIO2>0.9のとき)で、かつMurray scoreが2〜3点(and/orで記載)の場合を死亡率50%以上、

P/F比が80以下(FIO2>0.9のとき)で、かつMurray scoreが3〜4点(and/orで記載)の場合を死亡率80%以上として見積もっています。

絶対的な禁忌は設けず、7日以上の高圧人工呼吸器管理状態があったり、年齢が増えるほどECMOの適応外と判断されやすくなります。(RESP scoreでは1歳増加するごとに生存退院オッズが2%低下、50〜59歳で2点、60歳以上で3点減算されます。)

※2022年追記

また、ELSOガイドラインが更新されていましたので追記いたします。(ELSOガイドライン 2021 リンク

CESAR trial

CESAR trialは重症呼吸不全を対象に、V-V ECMOを使用した治療が従来の人工呼吸器での管理と比較して有用であると証明をした、ランダム化比較研究です。(※1

『こららの値を適応判断の基準として設けたとき、V-V ECMOという戦略は妥当です』といえる結果になりました。

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この研究を機にV-V ECMOが多くの施設で取り入れられました。

CESAR trialでの適応判断基準は以下のとおりです。

  • Murrayスコア
  • pH値

低酸素血症ではMurrayスコア、高二酸化炭素血症ではpH値のみを指標としてV-V ECMO施行群、人工呼吸管理群に分けたシンプルなものです。

しかしこのCESAR trialは問題点がいくつかあり、ECMO使用群はイギリスの1施設のみ、従来の人工呼吸管理群において治療戦略が標準化されておらず死亡率が高い点などから、議論の余地のある結果となっています。

そのため次に説明するEOLIA trialの結果が待たれました。

EOLIA trial

EOLIA trialは重症ARDS患者を対象に、V-V ECMOを使用した治療が従来の人工呼吸器での管理と比較して有用であるか検証をした国際的な多施設RCTです。(※2

EOLIA trialは早期のECMO導入に有用性があるかどうかに焦点があり、かつ従来の人工呼吸管理群において重症化した際にはECMOを施行するといったクロスオーバーありの研究でした。

結果、無益性により早期試験中止となってしまい、有意差は出ませんでした。(125症例中35症例(28%)でクロスオーバー)

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ECMO早期開始 vs 人工呼吸器管理で粘ってだめならECMO開始という比較になってしまい、従来治療群がクロスオーバーしたECMOによって生存率が上がった可能性がありました。

EOLIA trialでの適応判断基準は以下のとおりです。

  • 適切な呼吸器設定や補助療法をしたにもかかわらず、P/F<50が3時間以上継続
  • 適切な呼吸器設定や補助療法をしたにもかかわらず、P/F<80が6時間以上継続
  • pH<7.25 かつPaCO2 ≧ 60mmHgが6時間以上継続
  • いずれかが満たせば適応

これまでのtrialの適応基準に比べてより詳細に項目を設け、かつV-V ECMOの装置をCardiohelp、カニューレをHLSカニューレに統一するなど、標準化された治療方針により行われました。

また、この基準を満たしているけど肥満(BMI>45)や妊婦、厳しい人工呼吸管理を7日以上行っている症例などはECMO適応から除外されている点は注意が必要です。

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ECMO装置やECMOカニューレについてもこちらでまとめています!

まとめ

適応基準についてはさまざまな解釈があり、これもやはり施設ごとで十分に議論し、決定していくべきだと思われます。

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V-V ECMOはやはり魔法の治療戦略ではありません

専門用語も多く使用してしまっているため、随時リンクを増やし、より見やすいページにしていきたいと思っています!

気になることがあればコメントをいただけると泣いて喜びます!(泣)

よろしくおねがいします!

参考文献

(※1)CESAR trial: Peek GJ, Mugford M, Tiruvoipati R, et al. Efficacy and economic assessment of conventional ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure (CESAR): a multicentre randomised controlled trial. The Lancet 2009;374(9698):1351-63 (文献リンク

(※2)EOLIA trial: Alain Combes, M.D, et al. Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome (文献リンク

・日本COVID–19対策ECMOnet(リンク

・ELSOガイドライン(リンク

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